本屋で考えたこと

台北市北部、天母にSOGOデパートがオープンした。
ジュンク堂書店が入っているというので、行って来た。
普段、書籍は微風広場の紀伊國屋書店、デザイン関連書は誠品書店で買っている。
さて、ジュンク堂だ。
まずは、文庫。
創元推理文庫の海外作品が、まあまあ揃ってる。
ハヤカワミステリ文庫もまあまあいけてる。
微風広場の紀伊國屋書店は、この両文庫の品揃えが、ちょっと…あれなんで、不満があったのだ。だいたい超人気のフロスト警部シリーズの最新刊「フロスト気質」が入荷予定無しだったので日本から取り寄せて貰ったのだ。
ネットが発達したので、読みたい本があれば、ネットで調べて、アマゾンや楽天を使って日本から取り寄せればすむんじゃないのと、思う方もいるだろう。
どうしても必要な本、絶対読みたい本はそうする事もある。紀伊國屋書店で日本から取り寄せてもらう事もある。
普段一番良く読むミステリーや冒険小説の類いは、始めから作者やジャンル、出版社を決めて,
ネットで探すのは簡単だろうが、やはり書店の中をぶらぶらして選びたい。
実際、手に取ってウラ表紙の簡単な紹介や、帯の宣伝文句、海外物なら訳者が大事だし、解説者で決めちゃう場合もある。
北上次郎が解説書いてるから、きっと面白いんだよな。とか、知らない作家だけど、訳が高見浩じゃん、買っちゃおーとか。書店の中での扱われ方というか、置き位置も大切。平台に載せて、店員の手書きの熱いメモなどもあれば、予備知識がなくとも、そうかそうか買ってみるか、となる。
とにかく、本は書店で買いたいんだよ、じじいだし。
ここから本題。
本屋で考えた事。
その1)エンターテイメント系ではない、海外文学を読みたくなった、たまには。
本の雑誌の最新号に「海外文学」の小特集を読んだためだ。
最近あまり、そう言うの読んでないな、レイモンド・カーヴァーならすっと前にいくつか読んで面白かったし、未読のを探してみるか、アービングも良いかな。
おっ、あるじゃん、割と揃ってるじゃん、訳は村上春樹!、えーとこっちのは、やっぱり村上春樹。
よく見たら、村上春樹翻訳ライブラリーだって。くそっ。
他にも文庫が有るはずと、探す。あった、これも村上春樹訳。
しかも「マ行」に置いてある。おいっ、違うだろ。
結局気持ちが萎えて、そのへんの海外作品の棚を眺めてると、チャンドラー「ロング・グッドバイ」「さらば愛しき女よ」の新訳、っていうのがあって、これも村上春樹。
あせって、ハヤカワの文庫コーナーへ確認に行った。おー、既存の文庫はまだある。清水俊二訳だ。ワタシはこの訳で読んだし、これからも読みたかったら、こっち読むから、ハヤカワさん、絶対この清水さんの訳は無くさないでね。
フィッツジェラルド、サリンジャー、そこらじゅうに、村上春樹の翻訳小説が置いてある。もちろん本人の小説やエッセイ集も置いてある。
村上春樹は、出版業界のマイクロソフトか?
いやそれは例えがちょっとちがうな、
探し出せば必ず一家に一冊はある、まるでユニクロのようなもんか?いやこれも違う。
とにかくこれからは、「今日はちょっと、エンターテイメント系以外の、アメリカの小説でも読もうかな」とおもうと、村上春樹訳にあたる確率が、かなりふえたわけだ。
フンッ、やだな。
海外文学のコーナーをじわじわと侵略してく恐るべき翻訳者、村上春樹。いっそのこと「ハルキ出版」とか作ったらどうだ!
(↑それじゃあ、角川春樹と区別つかない)
オチ無し
その2)

あー河出文庫の装丁デザイン変わったんだ、ふーん。

ジュルジュ・バタイユ「眼球譚(初稿) 」
ふーん、単行本持ってたかなあ。
河出文庫はこういうのあるから良いんだよな、と手に取ってみる。
ウゲッッッ、何このデザイン。
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バタイユだよ、退廃も世紀末もしてないよ。
エロティシズムでも無いよ、全く異端でもない。
いくらなんでも、これは…
しかし、河出文庫が装丁をおろそかにするわけがない。きっと有名な人のデザインなんだ。ドキドキ、表紙の内側を見てみる。ギエー、デザインは菊地信義だった。フォーマットは別の人。以前は菊地信義がフォーマットデザインではなかったか。
どちらにしても、装丁の超エラい人なので、ワタシのようなものが意見は言えないが、「これ、ホントにこんなんで良いんだっけ?」とだれかに小声で聞いてみたくなる。
うーん、どんなふうに感じれば良いのだろう。
ちなみに、もう一冊はこれ。色も空の青か?
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絶対にその辺の若いデザイナーにはできないデザインだ。
でも…良いのかなー、こういうので。バタイユだよ…
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ちなみにこれは、角川文庫版、バタイユの「マダム・エドワルダ」
金子国義の絵を使った黒ベースのデザイン。
これは、わかる。手に取る。欲しくなる。読みたくなる。ちょっと難しいのかなとも思う。
退廃やエロティシズム、乾いたユーモアなどを想起させる。
多分、今ワタシが書いたイメージ、それこそが、邪魔なモノだと河出文庫と菊地信義は感じているのだろうか。
そんな型にはまったイメージを廃し、こういった作品に初めて接する読者に先入観を与えないデザイン? なのだろうか? 
いや、的外れ?、深読み? ワタシってアタマ悪い?
偏屈なじじい
三宅健司

本屋で考えたこと」への6件のフィードバック

  1. おはようございます。
    本屋さんにいっぱいいるおじさんを想像して楽しく読みました。
    私も本屋さん大好きです。娘と待ち合わせるとき「おかあさんは本屋さんに置いとけば1時間や2時間遅れても全然かまわない」と言ってます。
    先週末、某けっこう大きい書店で、同じ棚の前で立ち読みしていたどこかのおじさんと私。棚を移動して本に手をのばすと横に既にそのおじさんがいて。また棚を移動して読みふけっていると、隣にきた人がギョッとする気配に顔をあげればそのおじさん。気まずいというより連帯感(笑)。こうなったら今度はどこで会うだろうと、ふらふら歩いているうちにそんなこと忘れてああこの棚の平台は何だろう?と曲がるとそのおじさんが平台を見つめながら向こうから歩いてきた。
    そうなんですよ、日本でも村上春樹訳が増えています。
    「さらば愛しき女よ」もですか…そーですか…フンッ、やだな。笑
    装丁って需要ですよね。
    日本では昔の本を(たとえば蟹工船とか夏目漱石とか)装丁を変えて・・・カバーだけですけど、そうしただけで若者にバカ売れです。

  2. 本業なのでつい読み返しました(笑)
    出版業界はもう何年も不況なので
    悲しいけど最近は営業の力が大きくなって「目立つが一番」みたいな風潮になってます。
    あと黒い本は売れない、というジンクスもあるので、ゴチックがっつりな辺りも敷居を下げて読者層広げたい方向でこうなったのかもしれません。
    三宅さんのように本屋で探したい、というのを読むと嬉しくなります。
    海外いっても結局本屋行って1日つぶした〜なんて日も結構あります。

  3. emumuさんへ
    村上春樹のおかげでアメリカ文学が売れるのは良い事なんでしょうが…
    他は許すとしても、チャンドラーは村上春樹の翻訳で読みたくないですよね。ハハ…

  4. misakiさん
    こんにちは
    やっぱり本は本屋で買うのが楽しいですよね。
    装丁を見てるだけで刺激になります。
    学生の頃、羽良多平吉さんのエディトリアルデザインにショックを受けました。その頃出回っていた雑誌「HEAVEN」や切り取った「ガロ」の表紙は捨てられなくて、今も実家の倉庫に眠っていると思います。
    黒い本ですけど、角川の「マダム・エドワルダ」と同じく、金子国義の絵を使った「富士見ロマン文庫」っていうのが昔あったんですけど、ご存知ですか?
    ほとんど表紙のために、数十冊持ってたんですよ、あーゆうの良いですよね。
    話はそれますが、東野圭吾さんの短編集「超殺人事件」は読まれた事ありますか。その中の「超長編小説殺人事件」は、本好きや装丁に興味ある人には、たまらないバカ小説です。
    読むたびに笑ってしまいます。
    今度、本の「腰巻き」についての意見等も聞かせて下さい。(ワタシはすぐ捨てます。)

  5. 羽良多平吉さんはたまに「この色は…」と手に取ると出会います。独特だけど繊細な感じが好きです。
    有名な「HEAVEN」は手にとって見てみたいのですが(笑)いまだにお目にかかれません。うらやましい……。
    金子国義さんの絵は黒バック合いますね。富士見ロマン文庫はよく知らないのですが(すいません)、前勤めた事務所には何冊かあったと思います。
    「超殺人事件」読んだことあります。「秘密」とか「手紙」の感じと思ったら違ってました(笑)
    本の腰巻きは本来ないものですから、デザイン上なくていいのに!と思う時もあります。経費削減でカバーにオビ文いれちゃったこともありますけど。長くなりそうなのでこの辺で…

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